第257章

島宮奈々未は数秒ためらってから、ようやく通話に出た。

  わざとこちらからは何も言わない。丹羽光世のほうが先に口を開くのを待つ。

  「奈々。ホテルの前で待ってる。連れて行きたいところがある」

  受話口から届く、艶のある低い声。それを聞いた瞬間、島宮奈々未の胸の奥が、理由もなくざわついた。

  別に喧嘩を続けているわけでもないし、今さら丹羽光世を責めたいわけでもない。そんなことをしても仕方がない。

  ただ――二人の間には、どうしたって二人分の「死」が横たわっている。何も感じないなんて、嘘になる。

  これまではあまりに順風満帆だった。障害といえば、せいぜい女絡みの面倒事くらい...

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